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Last Update:2009.12.12


なんかブログの方が更新しやすかったので、そっちにちょこちょこ書いてます。よろぴくね^^

Eardrum's Favorite '09 (暫定)

  1. Mary J. Blige:Stronger With Each Tear(Geffen)
  2. MaxwellBLACKsummernight(Universal)
  3. Lily Allen:It's Not Me, It's You(Parlophone)
  4. Clipse:Til The Casket Drops(Columbia)
  5. Teena MarieCongo Square(Stax)
  6. Mos DefThe Ecstatic(Downtown)
  7. Raekwon:Only Built 4 Cuban Linx… Pt. II(Ice H2O/EMI)
  8. DoomBorn Like This(Lex)
  9. N'DambiPink Elephant(Stax/Concord)
  10. Calvin RichardsonFacts of Life:The Soul of Bobby Womack(Shanachie)
  11. Ward 21:Genesis(DHF)
  12. Anti-Pop Consortium:Fluorescent Black (Big Dada)
  13. Robert Glasper:Double Booked(Blue Note)

New Review

Clipse:Til The Casket Drops [Columbia,2009]

◆  音楽業界の気まぐれにさんざ付き合わされたヴァ―ジニアの兄弟だったが、復讐の女神が微笑んだ06年の《Hell Hath No Fury》でようやくその評価を確固たるものにした。今作のリリースの間に同タイトルの退屈なミックス・テープ・アルバムとパッとしない自分たちのレーベ ル・アルバムを挟み、Columbiaに移籍しての3年ぶりの新作は、件の名作と比べると流石に見劣りするが、それでも決して聴き逃せない強力な代物だ。
 プロデューサーはもちろん蜜月のNeptunesが主をはり、他にロサンゼルスのDJ Khalil、NYのSean C&LVを呼び込んでいる。ビートはどれもけばけばしいまでに派手、騒々しく、パーカッシヴで、分けて欲しいぐらいフック/コーラスが たっぷりある。今作でのNeptunesは前作のように神がかってはいないが、相変わらずClipseの二人には最高級のトラックを惜しみなく あてがう。
 前面に出たぶらつくピアノ・コードと後景に配されたブラスがビートの遠近法を成す"Popular Demand (Popeyes)"は良く出来ているし、コカインの精製人を意味する"Door man"は、あけたてのシャンパンみたく膨張し溢れだすシンセとマリアッチ風ホーンが混ざり合うもったりとしたグルーヴが面白い。レイドバックした眩い リーン・シングル"I'm Good"、商標の浮足立った8ビットVGビート"All Eyes On Me"は、業界屈指のセレブとなったPharrellの趣味が前面に出た、クラブ向けの、嫌味を感じさせるほどギラギラしたフライヤー・シングルだ。
 もっとも、今作に限ってい えば、若干既視感のあるNepビートより、ギターが喚く見事なオープニング“Freedom”で援護するSean C&LV、病みつきになる"Kinda Like Big Deal"をふるまったDJ Khalilのトラックの方が目立つかもしれない。とくに後者のシングルは、みみず腫れしたような野太いビートと、ほんの少しシンコペイトされたため引き 摺るように聞こえるパーカッションのリズムがどうにもクセになる素晴らしい出来栄えで、兄弟の最高のライムを引き出してもいる。うらぶれた街道を歩む ような"There Was a Murder"はダブを取り込んだ滴るような感じが見事なトラックで、これもDJ Khalilのプロデュースだ。
 怒りで煮え滾った06年作とは打って変わり、その作品の成功を受けてさらに贅沢に なり、余裕が出たのか、Clipseの二人はずっと開放的に自由を謳歌している。リムディンで寛 ぎ、ベンツSクラス、BMWトップシリーズを乗り回し、傍らには常に女を侍らせて、どでかい商談をつかんだ自慢話を繰り広げるマフィア気取りの唯我独尊の ライムは、デビュー作での不当な評価に復讐するように、アルバムをリリースするたびに自信をつけ、場数を踏むたびひっそりと狡猾さを増し、あからさまに鋭 くなってきたが、今作では抑えきれない感情に勢いづけられるのみならず、より巧みな方向に円熟した感じだ。向かうところ敵無しといってもいい二人のラッピ ンは、風を切るようなSEと鐘の音、警告音の ようにリフレインされるワンフレーズのシンセ・リフだけでコー ラスまで押し通す"Showing Out"で、もはやタイミングを合わせるドラムスさえ必要としなくなった。終幕の"Life Change"は、前作の忘れ難いエンディング"Nightmare"と同じように、全編を通じて隙のなかったライムのしじまに予期せぬ内省が持ち込ま れ、抗いがたいパラノイアを味あわせる。

Rihannna:Rated R [Def Jam,2009]

◆バルバドス出身の血色良いアイランド嬢から、サイバーポップの流行に与したアンドロイドへの鮮やかな変身、そして今回はどうみてもRihannaだとは思えない、傷つきキレたPA付きR指定のメタパンク女。
 件の事件が深く影を落としたのか、傘から銃に持ち替えて、先行シングル"Russian Roulette"では遂に引き金を引く。議論を呼ぶこの2年ぶりの新作はこれまでになく暗鬱かつ挑発的なトーンだ。神経痛のペルソナは現状を反映すると同時に計算ずくのスキャンダラスだし、環境に悪そうなシンセ全盛の現行シーンにフィット しており、Rihannaの無機質な声にも合ってはいる。方向性はいいとして、はたして肝心の出来はどうか。
 "Mad House"、"Wait Your Turn"、"Hard"と続く流れを聴く限り、これはようやく09年のベストアルバムのリストを更新できるなと思った。ただ残念なのは、その路線が一 貫されていないことだ。件の冒頭3曲に"Rockstar 101"、"G4L"を加えた計5曲の出来栄えは素晴らしくとも、"Stupid In Love"、"Fire Bomb"、"Photographs"、"Te Amo"、"The Last Song"といった曲はそれぞれColdplayみたいに大袈裟だったり、どうもビートが弱かったり、生半可にダンス・ポップだったりする欠点がある。特 にそれらの楽曲自体の出来が悪い訳ではないので、それらの曲がアルバムの幅を広げているのだ、ということもできそうだが、ロックやパンクの要素(音楽的な 面のみならず、白人音楽の鬱で厭世的なスタンスまで)を取り込み、生温いR&B作法で潤色した楽曲は、幅を広げているというよりもむしろ、アルバ ムの純度を下げてしまっているといった方が正しい。
 上述の良く出来た5曲、特にマイナーキーがどんよりと支配し、不安定なドラムスが背後でわななき、母音を引き延ばす手法は件の"Umbrella" と同じながら、ぐっとテンポを落とし、一つのフレーズの中でパラシュート降下のように音階を下げることで異常な雰囲気を形成するシングル"Wait Your Turn"があるだけ救われているが、どうせなら余計なセクシャルとお茶濁しのバラードと被害者のメロドラマを捨て、ビートに復讐を誓うくらい徹底されたどす黒いRihannaのアルバムが聴きたかった。 

Syleena Johnson:Chapter 4-Labor Pains [Aneelys/Universal,2009]

◆ 通算4作目はインディー(Johnson自身のレーベル)から。陣痛と銘打たれたタイトル通り、Johnsonの個人的な体験を元手に、何かを生み出す際 の苦しみと喜びを主題としてつくられたアルバムは、1、2作目ほど首尾一貫としてはいないが、テーマが曖昧で、音楽的にも生焼けだった前作 《Chapter 3-The Flesh》よりずいぶん優れた出来だ。実際に出産現場が描写される冒頭には少し後ずさりしたくもなるし、"Where's The Love"の 意味不明なヴォーカル加工(こんないいシンガーにギミックは不要)をはじめところどころプロダクションが過剰になる不満点もあるが、父親が降霊(死んでな いけど…)したようなリズム・アンド・ブルーズ"Freedom" 、"Is It Because I'm Black"や、夢見るような幸福をとらえた"It Is True"など、最良の瞬間には身震いさせられるよう な力強さと美しさがある。もちろんアルバムに収められた全ての楽曲がJohnsonに見合っているわけではないけれども、どの曲もメロディは練りこまれて おり、胸を打つ"You Let Me Down"、"My First"や"Your Love"における率直な声明とエモーショナルな深みは他のシンガーでは味わい難いものだ。何よりAretha Franklin、Chaka Khan、Betty Wrightらの面影を一挙に呼び起こす、もはや完成の域に達した類稀なヴォーカルが聴く者の心を掴んで離さない。

The Dream:Love Vs Money [Def Jam,2009]

◆07年のベスト・シングル"Umbrella"と"Bed"、そして独創的なグルーヴ・アルバム《Love/Hate》でR&B史に名が残るプロデューサー/シンガーの2作目。
 わらべうたみたいなリフレイン、上下するトーキング・ドラム、トランシーなシンセ・プロダクションが三位一体となり紡ぎだされるアバンギャルドなグルー ヴは相変わらず見事で、この二人がサイバー・ポップの潮流を作りだした張本人であることを再確認させる。ただ、いまやMariah Carey、Rihanna、Usherといった顧客を抱えるこのトップ・プロデューサーの方 法論が巷で蔓延し、消費されすぎているために、どうしても新鮮味には欠ける。"My Love"はMariah Careyに提供した"Touch My Body"の焼き直しみたいに聴こえるし、3音からなる単純なシンセ・オスティナートが堆積する"Mr. Yeah"は、07年から2年経った今となっては、自身の生み出した公式にどっぷり浸かった既視感ありありの量産ポップス、といった印象を抱かせる。
 もちろん、旬を過ぎたら終わる、と言われていたこのプロデューサー・タッグが、いまだアーバン・シーンを席巻し続けてい る理由を納得させる楽曲もある。(シーンが落ち込んでいるから現状維持してるってだけかもしれんけど…)緊 張感を煽る電子ノイズと美しい ヴォーカル・ハーモナイズド、相反する二層が主張し合い、タイトルさながら愛と欲の間にある二項対立を指し示す"Love Vs Money Part 2"や、感情の吐露につられ音数が膨らみだし、フレージングが切迫する6分30秒の引き込まれる傍白"Fancy"がそうだ。これらは二人が実験的なテクスチャに着手し、プロデューサーとしての技量と想像力を示した好例だろう。
 個人的には、シンセの放物線上をMichaeel Jackson気取りでムーン・ウォークするSF仕立ての"Walkin On The Moon"、より性愛の方向性を強めた今作の終幕を飾るに相応しいR Kellyのスロウ・ジャム"Kellys 12 Play"の2曲で、二人のポップ・アイコンへの憧憬が露呈されてるところがオモロかった。まぁ全体的に言えば前作に遠く及ばないけど、それでも退屈な 09年の新作の中では聴けるほうだな。(09.11.29)
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